配偶者の相続割合は二次相続のことも考えて決めましょう!(第19回コラム)

『配偶者の相続税額軽減』は必ず有利になるとは限りません

 父親の相続(一次相続)の時に母親が財産を相続する場合には『配偶者の相続税額軽減』(※注)の規定により相続税額が大幅に減額されることになります。ただし、配偶者が相続した場合にはその財産は配偶者の相続(二次相続)の時に再び相続財産になってしまいます。

 二次相続では法定相続人が子のみとなり基礎控除額が減少するうえ、『配偶者の相続税額軽減』も使えず、さらに配偶者のオリジナル財産も加算されると相続税額が大幅に増加する危険性があります。

 また、二次相続が平成27年以降の場合には改正による相続増税がありますので、一次相続で税金を負担しても、子が相続してしまう方が有利になることも考えられます。したがって、一次相続での配偶者の相続割合は二次相続のことを考えて決める必要があります。

 (※注)配偶者が相続した場合は法定相続分か1億6千万円かいづれか多い金額まで相続税はかかりません。

一次相続と二次相続の相続税額シミュレーション

【一次相続】

 父親の遺産額 : 1億円

 法定相続人   : 母親、子2人 

 基礎控除額   : 8,000万円(5,000万円+1,000万円×3人)

【二次相続】

 母親の遺産額 : 父親から相続した財産のみとします。(平成27年以降相続と仮定)

 法定相続人   : 子2人

 基礎控除額   : 4,200万円(3,000万円+600万円×2人)(平成27以降の基礎控除額)

      

   

一次相続 父親の
遺産額
1 億 円

遺産分割
の方法

ケース①
(配偶者全額)
ケース② ケース③
(法定相続分)
 母 親:1億円
 子2人: 0円
母 親:7,000万円
子2人:3,000万円
母 親:5,000万円
子2人:5,000万円
相続税 0円 60万円 100万円
二次相続 母親の
遺産額
1億円 7,000万円 5,000万円
相続税 770万円 320万円 80万円
一次相続
二次相続
の合計額
相続税

一次相続 :         0円
二次相続 : 770万円
  ------------------------
        合計:770万円

一次相続 :   60万円
二次相続 : 320万円
  -----------------------
        合計:380万円

一次相続 : 100万円
二次相続 :  80万円
  ------------------------
        合計:180万円

母親のオリジナル財産は考慮していません。

上記の試算から配偶者が全額を相続する(ケース①:770万円)より、法定相続分で相続した方(ケース③:180万円)が一次相続・二次相続の合計で590万円有利になることがわかります。

 

一次相続から二次相続までに相続対策をすればよい

 上記の試算で配偶者が1億円(遺産の全額)を相続すれば『配偶者の相続税額軽減』により一次相続では相続税が発生しませんが、そのまま二次相続を迎えてしまうと770万円の相続税が発生することが確認できます。

 ただし、父親の相続後、母親の相続までに期間があると考えられるケースでは生前贈与などの対策で二次相続の相続税を節税することが可能です。

 例えば、このケースで一次相続後に母親から子2人に年110万円の贈与を15年行った場合には、母親の財産額は3,300万円(110万円×2人×15年)減少します。
 その結果、二次相続での遺産額は6,700万円となり、相続税は275万円となります。(一次相続・二次相続の合計も275万円)他の生前対策も含めて、やり方次第ではケース1が税金面で最も有利なることも考えられます。

 

二次相続 母親の相続財産額 1億円
生前贈与  110万円 × 2人 × 15年
=△3,300万円
母親の遺産額  6,700万円
相続税 275万円

一次相続・
二次相続
の合計

相続税

一次相続 :        0円
二次相続 :275万円
 -----------------------
         合計:275万円

 

父親の全財産を母親が相続する場合の注意点

 法律上、遺産の半分は子が相続する権利があります。しかし、両親が築いた財産はあくまでも両親のものであり、父親の財産は母親が相続するものとの考え方もあると思います。
 また、配偶者の相続後の生活費や医療費などの必要性を考えると税金面だけで配偶者の相続分を決めることができないのは当然です。

 ただし、これまで述べてきたように、母親が相続した財産がそのまま遺された場合には、母親の相続時に高い相続税を払うことになってしまいます。したがって、父親の全財産を母親が相続する場合でも、税金面を考えた場合には同時に二次相続に備えて子や孫への生前贈与などを計画的に実行することが重要であると思われます。

 

遺産分割は相続の専門家に相談されることをおすすめします

 どのように遺産分割するのがよいかはそれぞれのご家庭の事情、遺産額、配偶者のオリジナル財産、二次相続までの期間、一次相続後の生前贈与計画などにより異なってきます。
 まずはできるだけ早く正確な遺産額を把握することです。そのうえで二次相続のことなどを考慮して遺産割合を決めましょう。
 したがって、失敗のない遺産分割をするためには相続人様と一緒になってこれらのことを考えてくれる相続の専門家に相談することをおすすめいたします。

 専門家に相談されるときは「遺産分割は具体的にどのようにサポートしてもらえるかを質問されるとよいでしょう。 

 

 

 

この記事を書いた人 税理士 和田武史

和田税理士事務所代表
税理士事務所勤務時代から相続業務を中心に携わる。
相続業務の経験はおおよそ 20 年。「顧客が相続に詳しい税理士に直接質問したい」というニーズに応えるために、相続の顧客対応を部下に任せずに自ら行うのがモットー。
他の事務所の説明に納得できない方の相談でも、税理士自らが真剣にお答えします。

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